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3-4.鋼鉄のレイキャシール
 フィオスは3人と同行して、セントラルドームを目指すことにした。
 各々がセントラルドームを目指す理由は違うようだが、別段それを語るでもない。ようは、目的を達成することができればOKというパーティだ。
 だが、それでも気になるのは、この4人の間に会話が殆どない点。フィオスも元々そんなに喋る方ではないが、それにしてもこのパーティは静かすぎる。
 人当たりの良さそうな青年ハンターとニューマン男も、互いにある程度の会話を交わすようだが、その関係は親密とは言い難い。彼等が初対面同士なのは、その様子からも伺える、

 が、会話が極端に少ないのは、彼等が初対面同士ということに限った話ではなさそうだ。その原因は、アンドロイドの彼女……シーダ=ロンにあった。
 彼女は戦闘が始まると、あからさまに青年ハンターの援護に回り、後のふたりは放置という態度を取って来た。
 シーダがそんな態度を取るのは、この4人の中で一番腕が立つのが青年ハンターだからだろう。シーダは通常時も青年ハンターの隣を陣取り、そこから全く離れようとしない。
 フィオスは先程の、ニューマン男の悟ったような表情の理由を理解してしまった。

 よって、そこからあぶれたフィオスとニューマン男は、自然とふたりで組む形で戦闘を行うことになった。
「フィオス、だっけ? ちょっと指出してくんない?」
 ニューマン男はパーティの歩幅に合わせながら歩きつつ、自分の左腕に装着された端末を起動させた。そして、そこから発光される緑の光に触れるようフィオスに促した。フィオスは青年がこれから何をしようとしているのかを理解し、右手だけプロテクターを外して素肌で端末に触れた。
「さっきは熱かっただろ? ごめんな」
 ニューマン男の謝罪に、フィオスは首を左右に振った。
「とんでもないです。あなたのテクニックのお陰で、自分は救われました」
 しかし今の手続きで、この青年がテクニックを放った範囲にフィオスがいた場合、自動でフィオスの周囲に防御壁が生成されることになる。ひとまずフィオスは味方に焼き殺される心配がなくなったということだ。

「それにしても、驚いただろ?」
 青年が苦笑いをしつつ、前方を歩く二組を顎で差した。
「あー……まぁ……」
 フィオスも苦笑いを浮かべつつ、キビキビと歩く女レンジャーの後ろ姿を見た。
「あのふたり、恋人同士とか?」
 フィオスの問いに、青年が肩をすくめる。
「さぁね。俺が出会うより前に、あのふたりはとうに組んでたからな」
「でも、初対面って……」
「男と女が出会ってすぐに何か通じ合うなんて、よくある話なんじゃないの? ま、俺には関係ない話だけどな」
 そのふてくされた言い方から、青年は女レンジャーに相手にされてないのが面白くないことが伺える。
 かく言うフィオスも、彼と似たような心境だった。が、フィオスは別段今の状況を悔しいと思わなかった。
「アレ、女と認識していいモノじゃないだろ」
 少年は女レンジャーにハンターとしての腕前を評価されてないことに苛立ちを感じていた。まぁ明らかに、自分が青年ハンターより腕が劣るのは自覚しているが。
 しかし、どうせ一期一会の出会い。ただの他人の評価など、自分にとっては無価値も同然。こんなこと、別に気にすることではない。ないのだ。

 しかし、そんな少年の様子を見て、ニューマン男がニヤリと笑った。
「ソッチがおたくの本性?」
「え?」
 フィオスは一瞬、言葉の意味がわからないという顔をした。が、すぐに気付く。
「ああ……年上には礼節のある対応をしろって家族にうるさく言われててな」
 フィオスの答えにニューマン男が声を上げて笑った。
「もしかしておまえ、良いトコの坊ちゃんとか?」
 その問いにフィオスは冗談じゃないと首を振った。
「その方が、俺の生き方はもっと楽だったろな」
「ていうか、おまえ、ボロ簡単に出すぎ」
 ニューマン男の笑い声につられて、フィオスも苦笑いを浮かべた。
「他の奴にはばれないようにするって」

 その時、前方から無機質な声が飛んできた。
「警戒を解くな。感心しない」
 鋼のボディ丸出しの顔で睨まれて、ニューマン男はやれやれという顔をした。
「確かにアレは女じゃない」
 ニューマン男はフィオスにだけ聞こえるように囁くと、今度は嬉しげに少年に向かって右手を差し伸べてきた。
「まだ名乗ってなかったな。俺、ジョーっていうの」
「あ、俺は……」
「さっき聞いたよ」
 そして半ば強引に、フィオスの右手を取り握手をしてきた。どうやらおかしな女のせいで、奇妙な親近感がジョーの中に芽生えたらしい。
「ほれ、今度はこっち!」
 ジョーが右手を高く上げて構えた。どうやらここにハイタッチしろということらしい。フィオスは少し面倒臭そうに、しかし笑顔を浮かべながら、勢い良くその右手をはたいてやった。
 誰かの悪口をきっかけに意気投合することはよくあることだが、フィオスはそれを良しとしない性格である。が、現在この女に関する事象については、そんなルールは除外しても良いだろう。


 静かだったパーティに、談笑が聞こえてくるようになった。
 その声の中心にいるのはほとんどジョーで、その都度彼は気難しいアンドロイドに注意をされた。しかしジョーはそれを言葉で返答するのみで、全く言うことをきく気配がない。どうやら彼は元々お喋りな性格で、きっと誰かとこうして話をしていたかったのだろう。
 その後方ふたりの会話に、前方を歩く青年ハンター・マークも時々口を挟むようになってきた。彼は隣に陣取るモノに配慮して言葉を控えていたようだが、彼も元々話好きな類の人種らしい。他愛無い天気の話や、目に入る景色の感想を述べつつ、パーティの雰囲気は徐々に明るくなって行った。
 勿論、シーダはその中に入ってくることはなかった。彼女は既にそれぞれを咎める気配もなく、ただそこにいるだけの存在になっていた。しかし、彼女はそれを気にするでもなく、今の状況を現象の1つとして受け入れているようだった。

 こうして4人は、基本2人2組ずつで原生生物を排除しつつ、森の奥へと向かって行った。
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