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2-1.初日:進展なし
 ラグオルの大爆発に関する総督府からの発表は、市民の期待を裏切るものだった。
 爆発の原因は、現在調査中。
 パイオニア1の人々の安否は、目下捜索中。
 惑星ラグオルの現在の状況は、一切不明。
 そして、市民の冷静な判断と対応の強力を繰り返す報道。
 情報統制が常であるこの世界において、その規制は予測の範囲内であったが、それでも余りにも情報が少なすぎる。

 何よりフィオスを落胆させたのは、総督府のハンターズに対する対応だった。
 フィオスはあの後、ハンターズギルドから緊急の召集を受けて、ハンターズエリアに戻った。
 そこでいざラグオルの調査に駆り出されるものと思えば、混乱するパイオニア2内の暴動を取り抑える任務にばかり回され、何の収穫もないままにその日を終えてしまった。
 ハンターズライセンスが施行されて僅か3ヶ月程度の新人に特別な任務などあろうはずもないが、それでもこの待遇に納得できなかった。
 自分がこんなことに時間を取られてる間にも、家族には命に関わる危険が迫っている。
 ラグオルの大爆発から既に16時間。時間がたてばたつ程、行方不明者の生存率が下がるのは言うまでもない。

 そして、総督府のトップ、コリン=タイレルの人物像が、目の当たりの現実と余りにかけ離れていて、フィオスの落胆に拍車をかけていた。
 タイレル総督はハンターズ出身で人望も厚く、またハンターズ時代の名声も高いことで知れ渡っている。また何といっても、レッドリング=リコの実の親というのがフィオスの中でポイントが高かった。何しろリコは、民衆のために自ら率先して危険に飛び込むような、まさに英雄と呼ぶにふさわしい勇者であったからだ。
 しかし、その父が民衆に向けて行ったことは、情報の隠蔽だった。

 パイオニア2のトップが、何も知らない訳がない。
 そして、パイオニア1程ではないにしろ、パイオニア2にも優秀な戦士や研究者達といった人材がいる。ハンターズエリアの転送装置を使えば、ラグオル地表に調査隊を送って調査をすることなどたやすくできるはずだ。今日1日かけて何も成果が得られないなど、ハンターズに属する者であれば、進展がない方がおかしいとわかる。
 それとも情報を隠蔽する必要が、あの星で起きているのだろうか?

『真実を知りたければ、自分の足で現場に行け』
 それがフィオスの父の口癖だった。自らの行動で得た情報に勝るものはないというのが父の持論だ。
 そして、父はハンターズの体質というものをよく理解していた。かつてハンターズに所属していた父は、今の社会の体制が身に染みているのだろう。だから父はハンターズを引退した──とフィオスは記憶している。
 しかし、そうとわかっていても、新人のフィオスにはラグオルに降りる手段はない。
 噂では、既に地表に降りたハンターズが何人もいると聞く。フィオスは完全に出遅れたのだ。
 彼は自分の不甲斐なさを、その怒りを、どこにぶつけていいのかわからず途方に暮れていた。


     ◆     ◆     ◆


 時刻は既に深夜2時。フィオスはハンターズの寄宿舎の自室のベッドに寝転がりながら、悶々と考え込んでいた。
 明日はどんな任務を命じられるのだろう。もしかしたら、また自分は無駄な時間を費やすことになってしまうのではないか……?
 はやる気持ちを抑えようと、フィオスはそれが癖であるように、何の気なしに自室の小型のコンピューターを起動させた。もしかすると、ラヴィアンからの連絡が来ているかもしれないという淡い期待を込めて。
 当然ながら、その淡い期待が叶えられることはなかったが。

 しかし、期待はなくとも、そこには希望があった。
 フィオスは慌ててベッドから飛び起きると、暗い部屋の中、端末の画面を食い入るように見た。
 それは突如降って沸いたような希望──
 ぼんやりと光るディスプレイの中に、ギルドからの依頼の通知が届いていたのだ。

 フィオスは駆け出しながら、腕に装着したアクセサリーに似た篭手状の端末を起動させた。
 すると少年の周囲にハンター用の装備が光と共に現れた。駆けながらその脚に、腕に、まだ小さな胸板に、愛用のプロテクターは最初から着てあったかのようにその身体にピッタリと装着される。

 フィオスの向かう先は、深夜のハンターズギルド。
 そこに、彼の未来を変えてくれる依頼者がいるはずだ。
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